クリーピー偽りの隣人 (2016年)
監督 黒沢清
脚本 黒沢清 池田千尋
原作 前川裕『クリーピー』
出演者 西島秀俊 竹内結子 香川照之
血が飛び散る外国のホラーは好きではありませんが、日本の心理的なホラーが好きです。
香川照之の不気味な演技は評判通りで、後半の壊れかけた竹内結子の表情が恐ろしくて心に迫ってきました。
結末で西島秀俊が犯人を殺すことが出来たからくりがよく判らなかったのですが、竹内結子が注射を打つフリをしたのか、元刑事の習性が事態を正確に判断してチャンスを狙っうことが出来たのか、などいろいろと想像して楽しみました。
原作は、さらに複雑なストーリーと思うので、ぜひ、読んでみたいと思っています。
それにしても、自粛中はたくさんの映画を観ています。
かもめ食堂 (2006年)
監督・脚本 荻上直子
原作 群ようこ
出演 小林聡美 片桐はいり もたいまさこ
特別ドラマチックな出来事があるわけでもなく、日常を描き、時折、ヘルシンキの港の風景が映るような淡々とした映画でした。
みどり(片桐はいり)さんも、まさこ(もたいまさこ)さんも、思うところがあって旅に出たのですが、たまたまフィンランドにやってきて、ふらりと、かもめ食堂に立ち寄った人たちです。日常が織りなすありふれた風景がとても、心地よくて、まさこさんのロストバゲージのエピソードやみどりさんの不器用さに「ふふ」と顔がほころんだり、「やっぱり猫が好き」をもう一度みたいなと思っているうちに観終わってしまいました。
心のどこかに残っていた「人魚の棲む家」の小さなとげが抜けていくようでした。
最近は「日々是好日」や「海街diary」のように、何気ない日常を描いた映画が好きになったようです。
人魚の眠る家 (2018年)
監督 堤幸彦
脚本 篠崎絵里子
原作 東野圭吾『人魚の眠る家』
出演者 篠原涼子 西島秀俊
軽い気持ちで観始めたのですが、テーマの重さに押しつぶされそうでした。
私は、家族(両親と兄弟)を看取った時、どんな形であれ生きていてほしいと願っていましたので、ましてや我が子なら脳死判定を打診されても少しの可能性に賭けるヒロインの気持ちは痛いほど解ります。
とはいえ、電気刺激に反応して動く我が子に一喜一憂するヒロインの気持ちも、違和感を感じる周りの気持ちも痛いほど伝わってきて、簡単に正解を決めることは出来ませんでした。この映画の結末はどうなるのだろう、観続けることが出来るだろうか?と随分、心配しました。
結果としてヒロインは我が子と”お別れ”をすることが出来てほっとしたのですが、”お別れ”が出来たのは、納得のいくまで看病をしたからでしょう。
科学の進歩はバラ色の未来をもたらしてくれるものとばかり思っていましたが、こんな残酷な結果を生む可能性に初めて気づきました。
観終わっても、なお、しこりが残る映画でした。
そして父になる (2013年)
監督・脚本 是枝裕和
出演者 福山雅治 尾野真千子 真木よう子 リリー・フランキー
「取り違え」はドラマチックなテーマで、昔の少女漫画やTVドラマ(赤いシリーズとか乳姉妹とか)などをドキドキ&わくわくしながら読んだり観たりしたものでした。
が、この映画は事実を元にしたもので、わくわくはもちろん、ドキドキもしない全く違う感情を持って観ていました。親の視点で考えてしまうからでしょうか、観終わっても後を引く映画でした。ネットでその後のドキュメンタリーを調べたりしながらもどうするのが良いか、判らないままです。
カンヌ受賞作品である意味も私にはよく判りませんでしたが、親の愛情とは?子育てとは?と考えてしまう、とても、意味深い映画でした。
ゴッホ展 兵庫県立美術館
3月1日の午後、美術館に行ってみると結構な人だかりでしたので、平日の方がこの時期(コロナウイルスの影響)は良いかなと思って、「安藤忠雄コーナー」と青いリンゴを見て帰ってきました。
水曜日はお休みの業種が多いので、木曜日(5日)に行くつもりでしたが、まさかの4日からの休館となってしまいました。
17日から再び開館とすることになり、今度こそはと水曜日を避けて19日木曜日に観に行ってきました。20日午後から急遽再休館となったので、ラッキーでした(^_^)v
ただ、観客は多かったです。皆さん、考えることは同じですね。
ゴッホと言えば「鮮やかな色彩」という印象を持っていましたが、初期のころは、ミレーに傾倒していて、ダークな色調の農村や農民を精力的に描いていたそうです。ミレーを形容する際に用いられた「土でかいた」という言葉を称賛し、人物を描くときの拠り所としていたそうで、農民の表情には生活が充分に表れています。
昨年、フランス旅行で見たフランスの農村風景は晴天に恵まれて明るい物でしたが、ゴッホが描いたダークな色調の農村風景には「生活」が伝わってきます。
ゴッホは人物を描くことに力を注いでいたようで、
・クロードモネが風景を描くように人物を描かねば
・雰囲気を作り出すのは人物だ
と書簡に記しています。その通り、描かれた人物は性格すら伝わってきそうでした。
とはいっても、やはり、明るい色彩の絵に眼が引き寄せられてしまいます。特に、話題の糸杉の絵よりも、緑地に白いバラが描かれた「薔薇」が素敵でした。
働いていた時は美術展に行って、面白いと感じたり癒されることばかりで、なかなか、画家が時々に感じていたことや絵画の背景にあるもをじっくりと鑑賞していなかったように思います。退職して、2年が経って、漸く心身とも疲れがとれて、心に響くことが増えてきたようで嬉しいです。